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野鳥の森の辺で 2

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この日の教室は、奈央子の古くからの友人たちのグループだった。奈央子の一番寛ぐ教室でもある。良い作品が出来上がるのは当然としても、自分の教室は集う人たちの心和む時間でもあってほしいと願っていた。その日の五人は、それぞれ主婦でありながら職業を持っていた。忙しいのである。それでも職務を忘れ、月に一度息を抜きに集ってくる。教師や医師、内には市の職員をしている人もいる。一時浮世を忘れるために白磁の皿やカップに無心に筆を走らせるのである。
 頃合いを見計らって「そろそろお茶にしましょうね」と、奈央子が声をかけると「もうそんな時間なの」と、口々に気のない返事が返ってきた。
「ハーブティーにするわ。入ったら呼ぶから、向こうへ来てね」
そう言い置いて、奈央子は早々に部屋を後にした。
 居間から続くオープンキッチンのガスレンジに薬罐をかけ、食器棚へと歩みよった。居間は、二十畳ほどの広さがあり、暖炉から少し離れた壁面に沿って二竿のアンティークの食器棚が置かれていた。その食器棚には奈央子の職業柄、様々なコーヒーや紅茶の陶器のセットが飾られている。特に奈央子は「ノリタケカンパニー」の前身の森村組が海外向けに製造した茶碗類が好きだった。明治時代に作られた「金盛り」と呼ばれる技法の物である。白磁に白い盛り上げ材で下絵を描きその上に金彩を施す。奈央子もそれまでに何度か金盛り技法を試みたことはある。しかし、ビーズと呼ばれているドットを描くぐらいはできても、極細の線は至難だった。しかも焼き上がると盛った所が流れて型崩れしたり、ポロッと取れる"めげる" と呼ばれる現象が起きて作品を台無しにすることもあった。明治初期の頃の(下がり藤)マークの森村組の食器類に描かれた金線の細さと優美さには到底至らなかった。明治期の職人の技は(器用)というよりこの技の難しさを実感している奈央子にとっては(すごい!)としか言いようがなく、その驚嘆が収集のきっかけになった。       続く....

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